福利厚生の運動支援が使われないときは、制度を増やす前に、拠点・勤務形態ごとの利用状況を並べて使えていない層を見つけ、その層に届く入り口を1つ足して記録で見直すのが近道です。
制度として整えていても、実際に使っているのは一部の社員だけ、という会社は少なくありません。この記事では、人事の担当者が「今ある運動支援を、より多くの社員が使える形に直すには何から見直せばよいか」を判断できるよう、使われない理由と、使われる仕組みを作る観点を整理します。サービスの種類や選び方は福利厚生にフィットネスを導入するには?、運動イベントの企画は福利厚生で健康イベントを成功させる方法で解説しています。
福利厚生の運動支援とは、ジムの利用補助や運動イベントなど、社員が体を動かす機会を会社が用意する取り組みです。
この記事でわかること
- 福利厚生の運動支援が使われにくい4つの理由
- 職場で体を動かす機会を、会社が整える理由
- 使われる仕組みを作るための4つの観点
- 見直しを始める4つの手順と、進めるときの注意点
※この記事の制度・指針に関する内容は、厚生労働省と健康経営優良法人認定事務局の公表資料にもとづき2026年9月27日に確認しました。本記事は福利厚生の運用の考え方を説明するもので、個人の健康状態や運動の可否を判断するものではありません。持病や体調に不安のある方の運動については、産業医等の専門家や医療機関にご確認ください。
福利厚生の運動支援が使われにくい4つの理由
運動支援が使われない理由は、社員の意欲の問題だけとは限りません。制度の形や運用の仕方によって、使える人と使えない人が分かれていることがあります。
1.使える社員が偏っている
ジムの利用補助は、近くに対象の施設がある社員や、決まった時間に通える社員には使いやすい制度です。一方で、地方の拠点や在宅で働く社員、シフト勤務の社員、育児や介護を担う社員にとっては、通う時間や場所の条件が合わないことがあります。結果として、一部の拠点や部署だけが使っている状態になりがちです。
2.忙しい社員ほど参加しにくい
日中に会議や繁忙な時間帯が続く社員ほど、運動の時間を取りにくくなります。運動の機会が特に必要と考えられる層に、支援が届きにくいという状況が起こります。
3.周知して終わっている
制度の案内を一度出しただけでは、存在を忘れられたり、使い方が分からないままになったりします。「福利厚生はあるのに、使った実感がない」という声が出るのは、周知から参加までの道筋が用意されていないことが一因と考えられます。
4.効果を説明しにくい
利用者数は分かっても、参加した社員に何が変わったかを記録していないと、続けるべき施策かどうかを社内で説明しにくくなります。説明できないまま予算の見直しの対象になることもあります。
職場で体を動かす機会を、会社が整える理由
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、成人に1日60分以上(1日約8,000歩以上に相当)の身体活動などを推奨しつつ、個人差を踏まえて、今より少しでも多く体を動かすことから始める考え方を示しています。
同ガイドの情報シート「働く人が職場で活動的に過ごすためのポイント」では、座って仕事をする時間が長い職種では身体活動が少なくなりやすいこと、そして職場で体を動かすことを個人の努力だけに任せるのは難しい面があることが指摘されています。運動支援が一部の社員にしか使われていない状態は、制度の有無ではなく、職場としての機会の整え方の問題として見直す必要があるといえます。
なお、健康経営優良法人2027(大規模法人部門)の認定要件にも、評価項目の一つとして「運動機会の増進に向けた取り組み」が設けられています。
使われる仕組みを作るための4つの観点
既存の運動支援を見直すときは、次の4つの観点で点検すると、直す場所を見つけやすくなります。
1.参加しやすい時間と形式
今の制度を置き換えるのではなく、使いにくい層に向けた別の入り口を足す考え方です。たとえばジムの利用補助はそのまま残し、拠点や在宅からも参加できるオンラインの運動、始業前や終業後の短時間の枠、平日に参加しにくい人向けの週末の枠などを組み合わせます。
- 勤務形態・拠点ごとに、今の制度を使える社員と使いにくい社員を分けて把握しているか
- 会議や繁忙な時間帯と重なりにくい時間の選択肢があるか
- 着替えや移動がなくても参加できる形式があるか
2.周知と参加の導線
案内を、使われていない層に届く経路で出しているかを確かめます。
- 使われていない拠点・勤務形態の社員が、ふだん目にする経路(拠点の掲示、シフトの連絡、在宅勤務者向けのチャットなど)で案内しているか
- 案内の中で、参加のリンクや申し込み先がすぐに分かるか
- 一度きりでなく、月ごとなど決まった時期に案内を出しているか
3.続く仕掛け
最初の1回の参加を、次の参加につなげる工夫です。ここでは管理職の声かけの仕方が大きく関わります。
- 管理職が部下に声をかけるときの伝え方を用意しているか。声かけは参加のきっかけになる一方で、伝え方によっては圧力と受け取られることがあるため、「参加してもよい」「業務の調整はできる」ことを伝える形にとどめる
- 開始前のリマインドを送っているか
- 内容が毎回同じにならないよう、時期ごとのテーマを決めているか
4.記録を残す項目
施策を続けるかどうかを説明できるよう、記録する項目を先に決めておきます。
- 拠点・部署・勤務形態ごとの参加率
- 参加が続いている人の割合(初回だけで終わっていないか)
- 参加した人の感想や、参加しにくい理由
参加率だけでは、参加しない人がなぜ参加しないのかは分かりません。短いアンケートで理由を聞いておくと、次の見直しに使えます。
見直しを始める4つの手順
手順1:今の利用状況を、拠点・勤務形態ごとに並べる
今ある運動支援の利用者数を、拠点・部署・勤務形態ごとに並べます。使われている層と、使われていない層がどこかを確かめます。
手順2:使われていない層の理由を確かめる
使われていない層に、時間・場所・内容のどれが合わないのかを、アンケートや管理職への聞き取りで確かめます。理由が分かれば、足すべき入り口の形が決まります。
手順3:足す入り口を1つ決め、試す
すべての層に一度に対応しようとせず、最も使われていない層に向けた入り口を1つ足します。期間を区切って試すと、社内の合意も得やすくなります。
手順4:記録を見て、翌月の案内と内容を直す
決めた項目を月ごとに確かめ、参加が少ない時間帯や、続かない理由を翌月の案内と内容に反映します。
進めるときの注意点
- 参加を強制しない:運動支援は、社員が自分で選んで使う制度です。参加は任意であることを明示し、参加しないことを評価や処遇に結び付けないようにします。
- 体調に配慮する:持病や体調によって、控えた方がよい運動がある社員もいます。無理をしないことを案内に書き、個別の相談は産業医等につなぎます。
- 個人の健康情報の扱いを決めておく:アンケートで体調や健康状態を尋ねる場合、その回答は健康情報等として慎重な取り扱いが必要になることがあります。誰がどの範囲の情報を扱うかを、厚生労働省の手引きを参考に社内の取扱規程に沿って決め、部署ごとの集計では人数の少ない単位をほかの単位とまとめます。
- 参加率だけで部署を比べない:参加率の差には、業務の繁閑や勤務形態の違いが表れます。数値だけで部署や管理職を評価しないようにします。
運動の機会を、全社員に届く形にするには
ボディパレットでは、毎月の健康動態モニタリングで部署・組織ごとの状態の推移を確認し、変化のあった組織に合わせて運動や生活習慣のプログラムを組み合わせる支援を行っています。平日の朝や土曜日に、拠点や在宅からも参加できるオンラインの運動プログラムもあります。今ある福利厚生を残したまま、使いにくい層への入り口を足す形でご相談いただけます。
今ある運動支援を、使われる形に見直したい方へ
現在の制度と利用状況をもとに、参加しやすい形式や案内の出し方の整理について、ボディパレットの担当者がご相談をお受けします。
よくある質問(Q&A)
Q. ジムの利用補助をやめて、別の運動支援に切り替えるべきですか?
A. 今の制度を使えている社員がいる場合は、無理にやめる必要はありません。使いにくい層に向けた別の入り口を足す形で見直すと、今の利用者の満足を保ったまま、参加できる社員を広げやすくなります。
Q. 拠点や勤務形態ごとの利用状況は、どう集計すればよいですか?
A. 利用者の名簿や申し込みの記録に、拠点・部署・勤務形態(出社・在宅・シフトなど)を加え、それぞれの対象人数に対する利用者の割合を並べます。初回だけ使った人と、続けて使っている人を分けておくと、入り口の問題か、続け方の問題かを見分けやすくなります。人数の少ない単位は、個人が推測されないようほかの単位とまとめて集計します。
Q. 参加率が上がらないときは、何を見直せばよいですか?
A. まず拠点・勤務形態ごとの参加率を並べ、どの層で参加が少ないかを確かめます。そのうえで、時間・場所・内容のどれが合っていないのかを、アンケートや管理職への聞き取りで確かめ、案内の出し方や時間帯を見直します。
Q. 運動支援の効果は、どう説明すればよいですか?
A. 参加率に加えて、参加が続いている人の割合や、参加した人の感想を記録しておくと、施策が社員に届いているかを説明しやすくなります。健康状態の変化を確かめる場合は、個人の健康情報の扱いを社内のルールに沿って決め、産業医等と相談しながら進めてください。
参考資料
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/undou/index.html (本文 https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf 、概要 https://www.mhlw.go.jp/content/001204942.pdf 、成人版 https://www.mhlw.go.jp/content/001195866.pdf 。2026年9月27日確認)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』情報シート:働く人が職場で活動的に過ごすためのポイント」https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-006.html (2026年10月1日確認)
- ACTION!健康経営「健康経営優良法人2027(大規模法人部門)認定要件」https://kenko-keiei.jp/wp-content/themes/kenko_keiei_cms/files/2027_dai_ninteiyoken.pdf (2026年9月27日確認)
- 厚生労働省「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」(2019年3月)https://www.mhlw.go.jp/content/000497426.pdf (2026年9月27日確認)
この記事の著者・監修
執筆:ボディパレット編集部(健康経営支援の企画・運用に携わるスタッフが執筆)
監修:髙瀬 雅弘(フラクタルワークアウト株式会社代表取締役 / ボディマネジメントパートナー)
最終更新日:2026年10月3日

