2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則により、熱中症のおそれがある作業を行う事業者には「報告体制の整備」「対応手順の作成」「関係者への周知」が義務になりました。出張先や移動中の作業も含まれます。
熱中症とは、暑い環境で体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温を調節する働きがうまくいかなくなったりして起きる、さまざまな症状の総称です。
この記事でわかること
- 熱中症対策の規則が改正された背景
- 対象となる「熱中症を生ずるおそれのある作業」の条件
- 事業者に義務付けられた3つの対応
- 夏の前に人事・総務が確認しておきたい点
※この記事の制度・統計に関する内容は、厚生労働省の公表資料にもとづき2026年9月27日に確認しました。個別の対応は、所轄の労働基準監督署や産業医等の専門家にご確認ください。本記事は熱中症の診断や治療について説明するものではありません。体調に異常がある場合は、ためらわず医療機関を受診してください。
規則が改正された背景
厚生労働省によると、職場での熱中症による休業4日以上の死傷者は、2025年に1,803人となり、統計を取り始めてから最も多くなりました。死亡者は19人でした(2024年は死傷者1,257人、死亡者31人)。
厚生労働省は規則の改正にあたって、死亡に至った例の多くが、初期症状の放置や対応の遅れによるものだとしています。こうした状況を受けて、熱中症の疑いがある人を早く見つけ、重くなる前に対応できるよう、事業者が講じるべき措置が新たに定められました。
対象となる作業の条件
対象になるのは、次の2つの条件がそろう作業です。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 暑熱な場所 | WBGT(暑さ指数)が28度以上、または気温が31度以上の場所 |
| 作業の時間 | 上記の場所で、継続して1時間以上、または1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業 |
ここでいう「場所」は、特定の作業場だけを指すわけではありません。出張先での作業、複数の場所を移動しながらの作業、作業場所から作業場所への移動中も含む考え方が示されています。臨時の作業であっても、条件を満たす見込みがあれば対象です。
暑熱な場所に当たるかどうかは、原則として作業場所でWBGTや気温を測って判断します。ただし、風通しのよい屋外の作業などでは、天気予報や環境省の熱中症予防情報サイトを使って判断してもよいとされています。
また、この条件に当てはまらない作業でも、作業の強さや服装によっては熱中症の危険が高まるため、規則に準じた対応をとるよう努めることが求められています。
事業者に義務付けられた3つの対応
対応1:報告体制を整える
熱中症の自覚症状がある人や、熱中症が疑われる人を見つけた人が、その旨を報告する体制(連絡先や担当者)を事業場ごとにあらかじめ決めておきます。
対応2:対応の手順を作る
熱中症が疑われる人が出たときに、作業から離れさせる、体を冷やす、必要に応じて医師の診察や処置を受けさせる、といった措置の内容と手順を、作業場ごとにあらかじめ決めておきます。事業場の緊急連絡網や、緊急搬送先の連絡先・所在地も含めます。
対応3:関係する人に周知する
1と2で決めた体制や手順を、作業に従事する人に知らせます。対象は自社の労働者だけでなく、同じ場所で作業する労働者以外の人も含まれます。掲示、メール、文書の配布などの方法が例として示されています。
夏の前に人事・総務が確認しておきたいこと
規則の対象は、建設業や製造業の現場に限りません。オフィス中心の会社でも、次のような働き方があれば、対象となる作業がないか確認が必要です。
- 外回りの営業や訪問サービスで、屋外を長時間移動する
- 倉庫・配送・設営など、空調の効きにくい場所での作業がある
- 展示会やイベントの設営・運営を社員が行う
- 出張先の現場で作業を行う
確認の進め方の例として、次の順番があります。
- 部署ごとに、夏場に暑い場所で行う作業と、その時間の見込みを洗い出す
- 対象となる作業がある事業場で、報告先(連絡先・担当者)と対応手順を決める
- 緊急連絡網と搬送先を手順に書き込み、作業する人に周知する
- 夏の始まる前に、周知したことと手順の内容を記録しておく
担当者が一人で抱え込まず、産業医や衛生管理者、現場の責任者と分担して進めると、手順が現場で使えるものになります。
暑い時期の健康施策も見直す
夏は、屋外でのウォーキングイベントや運動施策の実施にも注意が必要な時期です。暑い時期は屋内やオンラインで参加できる形に切り替える、実施の時間帯を朝や夕方にずらす、といった見直しも検討できます。
ボディパレットでは、毎月の健康動態モニタリングで部署・組織ごとの状態の推移を確認し、変化のあった組織に合わせて運動や生活習慣のプログラムを組み合わせる支援を行っています。平日の朝や土曜日に、拠点や在宅からも参加できるオンラインの運動プログラムもあります。季節に合わせた施策の組み替えについてもご相談いただけます。
暑い時期の健康施策の運用を見直したい方へ
屋外施策の切り替えや、季節に合わせた運動プログラムの組み方について、ボディパレットの担当者がご相談をお受けします。
よくある質問(Q&A)
Q. 熱中症対策の義務化はいつからですか?
A. 改正労働安全衛生規則は2025年4月15日に公布され、同年6月1日に施行されました。
Q. どのような作業が対象ですか?
A. WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の場所で、継続して1時間以上、または1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業です。出張先や移動中も含まれる場合があります。
Q. 事業者は何をしなければなりませんか?
A. 熱中症の疑いがある人を報告する体制の整備、作業からの離脱や身体の冷却などの対応手順の作成、それらを作業に従事する人へ周知することの3つです。
Q. オフィスワーク中心の会社も対象になりますか?
A. オフィス内の業務だけであれば対象になりにくいと考えられますが、外回りの営業、倉庫作業、イベントの設営など、暑い場所で一定時間以上続く作業があれば対象になり得ます。部署ごとに作業の内容を確認することをおすすめします。
Q. 暑熱な場所に当たるかどうかは、何で判断すればよいですか?
A. 原則として、作業場所でWBGT(暑さ指数)や気温を測って判断します。風通しのよい屋外の作業などでは、天気予報や環境省の熱中症予防情報サイトの暑さ指数を使って判断してもよいとされています。測った値や確認した情報は、作業の記録とあわせて残しておくと、手順の見直しに使えます。
Q. 条件に当てはまらない作業は、何もしなくてよいですか?
A. 条件に当てはまらない作業でも、作業の強さや服装によっては熱中症の危険が高まります。そのため、規則に準じた対応をとるよう努めることが求められています。報告先や対応の手順は、対象の作業に限らず社内で共通にしておくと運用しやすくなります。
Q. 協力会社や派遣の人など、自社の社員以外にも周知が必要ですか?
A. 周知の対象は、自社の労働者だけでなく、同じ場所で作業する労働者以外の人も含まれます。現場に入る協力会社の人などにも、報告先と対応の手順が伝わるよう、掲示や文書の配布などで知らせておきます。
参考資料
- 厚生労働省「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」(基発0520第6号、2025年5月20日)https://www.mhlw.go.jp/content/001490909.pdf (2026年9月27日確認)
- 厚生労働省 鹿児島労働局「職場における熱中症対策の強化について~令和7年6月1日に改正労働安全衛生規則が施行されます~」https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/anzen_eisei/nettyusyou/2025-0418-7.html (2026年9月27日確認)
- 厚生労働省「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73330.html (2025年確定値、2026年5月27日公表。2026年9月27日確認)
この記事の著者・監修
執筆:ボディパレット編集部(健康経営支援の企画・運用に携わるスタッフが執筆)
監修:髙瀬 雅弘(フラクタルワークアウト株式会社代表取締役 / ボディマネジメントパートナー)
最終更新日:2026年10月3日

