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メンタルヘルス研修の選び方:セルフケアとラインケアの違い

メンタルヘルス研修の選び方:セルフケアとラインケアの違い

メンタルヘルス研修は、全社員向けのセルフケア研修と管理職向けのラインケア研修を分けて計画し、研修後の相談先の周知と効果の確かめ方まで決めておくのが基本です。

メンタルヘルス研修とは、働く人の心の健康を守るために、社員や管理職が必要な知識を身につける場です。

この記事でわかること

  • メンタルヘルス研修の土台になる、厚生労働省の指針の「4つのケア」
  • セルフケア研修とラインケア研修の対象・内容・進め方の違い
  • 新入社員・一般社員・管理職・人事担当者ごとの研修の選び方
  • 研修の実施の形と、研修後につなげること

※この記事の制度・統計に関する内容は、厚生労働省の公表資料にもとづき2026年9月27日に確認しました。本記事は研修の選び方を説明するもので、個人の心の健康状態を判断するものではありません。個別の対応は、産業医等の専門家にご確認ください。

研修の土台になる「4つのケア」

メンタルヘルスケアとは、心の健康の不調を防ぎ、不調が起きたときに早く気づいて対応するための、職場での取り組みの総称です。

厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(以下、指針)では、職場のメンタルヘルスケアを次の4つに分け、継続的かつ計画的に行うことが重要だとしています。

ケア担い手主な内容
セルフケア働く人自身自分のストレスや心の健康について理解し、ストレスを予防・軽減し、対処する
ラインによるケア管理監督者(管理職)職場環境の改善や、部下からの相談への対応を行う
事業場内産業保健スタッフ等によるケア産業医、衛生管理者、保健師、人事労務管理スタッフなど対策の提言と推進を担い、社員と管理職を支える
事業場外資源によるケア社外の専門機関や専門家専門的な支援を行う

出典:厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」をもとに作成

指針では、4つのケアがうまく働くよう、事業者がそれぞれの職務に応じた教育研修・情報提供を行うよう努めるものとしています。つまり、メンタルヘルス研修は「社員向け」「管理職向け」「産業保健スタッフ向け」と、ケアの担い手ごとに分けて考えるのが基本です。必要に応じて社外の機関が行う研修への参加に配慮することや、社内に教育研修の担当者を計画的に育てることも有効とされています。

教育研修に取り組む事業所の割合

厚生労働省の「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所は63.0%でした。取り組んでいる事業所のうち、教育研修・情報提供を行っている割合は次のとおりです。

取り組みの内容全体50人以上の事業所
労働者への教育研修・情報提供35.6%43.5%
管理監督者への教育研修・情報提供29.1%41.2%
事業所内の産業保健スタッフへの教育研修・情報提供13.8%25.3%
(参考)ストレスチェックの実施64.0%89.8%

出典:厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)の概況」第2表(2025年10月31日現在。メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所を100とした割合)

この数値は「事業所」単位の集計で、会社全体の割合ではありません。ストレスチェックに比べると、教育研修を行っている事業所の割合は低いことが分かります。

セルフケア研修とラインケア研修の違い

指針に示されている教育研修の項目をもとに、2つの研修の違いを整理すると、次のようになります。

項目セルフケア研修ラインケア研修
対象管理職を含む全ての社員管理職(管理監督者)
目的自分のストレスに気づき、対処できるようにする部下の変化に気づき、職場の環境を整え、相談に対応できるようにする
主な内容会社の方針、ストレスの基礎知識、ストレスへの気づき方と対処の方法、早めに相談することの大切さ、社内外の相談先会社の方針、管理職の役割、職場環境の評価と改善の方法、部下からの相談への対応(話の聴き方など)、休業した人の職場復帰の支援、産業保健スタッフとの連携、個人情報の保護
進め方の例講義に加え、自分のストレスを振り返る演習講義に加え、相談を受ける場面を想定した演習

出典:厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」6(1)をもとに作成(進め方の例は編集部による)

指針では、管理監督者もセルフケアの対象に含めるとしています。管理職向けの研修では、ラインケアの内容とあわせて、管理職自身のセルフケアも扱う必要があります。

対象者別の選び方

1.新入社員

職場の環境が大きく変わる時期のため、セルフケア研修の基本と、社内外の相談先を知ってもらうことが中心になります。厚生労働省の「こころの耳」では、新入社員向けのセルフケアの情報や、短い動画の教材も公開されています。

2.一般社員

セルフケア研修が中心です。一度だけで終わらせず、ストレスチェックの時期や繁忙期の前など、自分の状態を振り返りやすい時期に合わせて案内すると、学んだことを使う機会につながります。

3.管理職

ラインケア研修と、管理職自身のセルフケアの両方が対象です。新たに管理職になった人には、役割と相談への対応の基本を優先して伝えます。経験のある管理職には、職場環境の改善の進め方など、実務に近い内容を加える方法があります。

4.人事担当者

人事労務管理スタッフは、指針の「事業場内産業保健スタッフ等」に含まれます。研修を企画する立場として、4つのケアの全体像、相談体制、職場復帰の支援、個人情報の保護などを理解しておくことが大切です。産業医や保健師などの専門職と、研修の企画から一緒に進める体制を作っておくと、内容の偏りを防げます。

実施の形を決める

研修の形には、主に次の3つがあります。

形向いている場面気をつける点
集合研修演習や話し合いを入れたいとき(特にラインケア)拠点が多い会社や交代勤務のある職場では、参加の機会に差が出やすい
オンライン研修拠点が離れている、移動の時間を取りにくいとき演習の進め方と、参加者が発言しやすい工夫が必要
eラーニング全社員に基本の知識を届けたいとき、入社時の案内視聴しただけで終わりやすいため、理解の確認を組み合わせる

研修の時間や頻度について、指針に決まった基準は示されていません。公的な教材や支援を組み合わせる方法もあります。

  • 「こころの耳」には、「15分でわかるセルフケア」「15分でわかるラインによるケア」などのeラーニングや、3〜5分程度の動画「5分研修シリーズ」、管理監督者向けの研修マニュアルが公開されています。
  • 各都道府県の産業保健総合支援センターでは、中小規模の事業場を対象に、管理監督者向けや若年労働者向けのメンタルヘルス教育を無料で行っています。時間や回数などの条件はセンターごとに確認してください(例:東京産業保健総合支援センターでは、いずれも2時間程度、1事業場1回限り)。

研修後につなげること

相談窓口を周知する

指針は、社員が自ら相談できる環境を整えることを求めています。研修の最後に、社内外の相談先と相談の方法を示し、研修後も社内のポータルなどで確かめられるようにしておきます。

ストレスチェックと組み合わせる

指針では、ストレスへの気づきを促すために、ストレスチェックの実施が重要だとしています。セルフケア研修は結果の受け止め方や相談につなげる方法を学ぶ場として、ラインケア研修は集団分析の結果を職場環境の改善に生かす方法を学ぶ場として、ストレスチェックと時期を合わせて計画する方法があります。

効果の確かめ方を決めておく

研修の効果は、次の3つの段階で確かめる方法があります。

  1. 参加率:研修が対象者に届いているか(部署・拠点ごとの差も確認する)
  2. 理解度:研修の直後に、簡単な確認テストやアンケートで理解を確かめる
  3. 行動の変化:数か月後に、相談窓口の認知や、管理職による職場の見直しなど、行動に変化があったかを確かめる

参加率だけでは、研修が役立ったかは分かりません。反対に、行動の変化だけを見ると、変化がなかったときに、研修が届かなかったのか、内容が合わなかったのかを区別できません。複数の段階を組み合わせて確かめることが大切です。

研修を行うときの注意点

  • 個人の不調の判断は専門職に任せる:研修は知識を身につける場であり、受講者が自分や部下の状態を診断するためのものではありません。ラインケア研修では、「いつもと違う」と感じたときに産業医や保健師などにつなぐ流れを伝えます。
  • 研修の中で受講者の個人情報を扱わない:演習で自分のストレスや悩みを他の人の前で話させない、事例は架空のものを使う、セルフチェックの結果は集めない、といった配慮をします。指針も、健康情報を含む個人情報の保護に配慮することが極めて重要だとしています。
  • 参加や理解度を人事上の評価に使わない:研修への参加や確認テストの結果を評価に使うと、率直に学びにくくなります。
  • 外部の研修を使う場合も、会社の方針を伝える:社外の講師に任せきりにせず、自社の方針や相談先を研修の中で伝えます。

研修で学んだことを、日々の状態の確認につなげる

ボディパレットでは、毎月の健康動態モニタリングで部署・組織ごとの状態の推移を確認し、変化のあった組織に合わせて運動や生活習慣のプログラムを組み合わせる支援を行っています。研修の代わりになるものではありませんが、研修の後に部署ごとの状態がどう変わったかを確かめる材料として使えます。

対象者ごとに、研修をどう組み立てるか整理したい方へ
社員・管理職など対象者ごとの研修の組み合わせ方や、研修後の確かめ方について、ボディパレットの担当者がご相談をお受けします。

よくある質問(Q&A)

Q. メンタルヘルス研修の実施は、法律で義務付けられていますか?

A. 指針では、事業者がそれぞれの職務に応じた教育研修・情報提供を行うよう努めるものとされています。研修の時間や頻度についての決まった基準は示されていません。自社の状況に合う進め方は、産業医等と相談して決めることをおすすめします。

Q. セルフケア研修とラインケア研修は、どちらから始めればよいですか?

A. 指針では、セルフケアは管理職を含む全ての社員が対象で、ラインケアは管理職が対象です。どちらか一方だけでなく、両方を計画に入れることが基本です。管理職向けの研修では、管理職自身のセルフケアもあわせて扱います。

Q. eラーニングだけで十分ですか?

A. 基本の知識を全社員に届けるにはeラーニングが使いやすい一方で、相談を受ける場面の演習などは集合研修やオンライン研修のほうが向いています。対象と目的に応じて組み合わせる方法があります。

Q. 研修の効果はどう確かめればよいですか?

A. 参加率、研修直後の理解度、数か月後の行動の変化の3つの段階で確かめる方法があります。確かめる項目と時期は、研修を企画する段階で決めておきます。

参考資料

この記事の著者・監修

執筆:ボディパレット編集部(健康経営支援の企画・運用に携わるスタッフが執筆)
監修:髙瀬 雅弘(フラクタルワークアウト株式会社代表取締役 / ボディマネジメントパートナー)
最終更新日:2026年10月3日

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