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社員のヘルスリテラシーを高める取り組み:健康情報の届け方と続け方

社員のヘルスリテラシーを高める取り組み:健康情報の届け方と続け方

社員のヘルスリテラシーを高めるには、健康情報を配る量を増やすより、誰に・何を・いつ・どの経路で届けるかを先に決め、年間の計画に組み込んで続けることが大切です。

社員向けに健康情報を発信していても、「読まれているのか分からない」「関心のある社員にしか届かない」と感じている担当者は少なくありません。この記事では、健康経営の担当者が「社員向けの健康情報の提供をどう設計し、どう続けるか」を判断できるよう、考え方と進め方を整理します。

ヘルスリテラシーとは、健康に関する情報を手に入れ、理解し、活用するための力のことです。世界保健機関(WHO)の用語集では、「良い健康を保ち、高めるように情報を入手し、理解し、活用するための動機と能力を決める、認知的・社会的なスキル」と説明されています(WHO「Health Promotion Glossary」1998年。日本語は編集部訳)。ボディパレットでは、社員一人ひとりに知識を求めるより、必要なときに確かな情報と相談先にたどり着ける仕組みを職場に整えることが、会社として取り組める部分だと考えています。

この記事でわかること

  • ヘルスリテラシーの定義と、3つの段階
  • 健康経営優良法人2027の認定要件での「ヘルスリテラシーの向上」の位置づけ
  • 情報提供を設計する前に決めておくこと
  • 健康に関心の薄い社員にも届けるための工夫
  • 年間を通じて続ける計画と、効果の確かめ方

※この記事の制度に関する内容は、経済産業省・ACTION!健康経営、厚生労働省、WHOの公表資料にもとづき2026年9月28日に確認しました。認定要件は年度ごとに見直されます。申請の際は、その年度の公式の資料をご確認ください。本記事は社内の情報提供の進め方を説明するもので、個人の健康状態を判断するものではありません。個別の健康相談は、産業医等の専門家にご確認ください。

ヘルスリテラシーの3つの段階

ヘルスリテラシーは、読み書きができるかどうかだけを指す言葉ではありません。厚生労働省の統合医療情報発信サイト(eJIM)では、ヘルスリテラシーを次の3つの段階に分けて紹介しています。

段階内容社内の情報提供に置き換えた例
機能的基本的な読み書きの力健診結果の見方や、制度の案内を読んで理解できる
伝達的情報を自分で探し、人に伝え、自分に当てはめようとする力気になることを社内の窓口や公的なサイトで調べ、相談できる
批判的得られた情報をうのみにせず、吟味して主体的に使う力広告やSNSの健康情報を、出典を確かめてから判断できる

出典:厚生労働省 eJIM「医療者と患者のコミュニケーション:ヘルスリテラシーを手がかりにして」をもとに作成(右の列は編集部による)

社員向けの情報提供でも、「読んで分かる」内容を届けるだけでなく、「どこで調べ、誰に相談すればよいか」「情報の確かさをどう見分けるか」まで含めて設計すると、3つの段階をまんべんなく扱えます。

健康経営優良法人の認定要件での位置づけ

健康経営優良法人2027の認定要件では、大項目「制度・施策実行」のうち、健康経営の実践に向けた土台づくりの中に「ヘルスリテラシーの向上」があり、評価項目は「管理職または従業員に対する教育機会の設定」とされています。

部門位置づけ(健康経営優良法人2027)
大規模法人部門選択して満たす評価項目の一つ。「従業員の健康保持・増進に関する教育」については、参加率(実施率)を測っていることが求められる
中小規模法人部門「ヘルスリテラシーの向上」「ワークライフバランスの推進」「職場の活性化」などを含む④~⑩のうち、2項目以上を満たす

出典:ACTION!健康経営「健康経営優良法人2027(大規模法人部門)認定要件」「同(中小規模法人部門)認定要件」をもとに作成

大規模法人部門では、教育の機会を設けるだけでなく、参加率(実施率)を測ることが条件になっています。情報提供や教育を企画する段階で、参加の記録を残す方法を決めておくと、申請の準備にも使えます。評価項目の詳しい基準は、その年度の認定要件と調査票で確かめてください。

情報提供を設計する前に決めること

発信を始める前に、次の3点を決めておきます。

1.何のために届けるのか(目的)

自社の健康課題から目的を決めます。健康診断の結果、ストレスチェックの集団分析、長時間労働の状況など、すでに手元にあるデータを見て、「どの課題に、どの情報で働きかけるか」を書き出します。目的が決まると、届ける情報を絞り込みやすくなります。

2.誰に届けるのか(対象)

全社員に同じ内容を送るだけでは、関心のある人にしか読まれにくくなります。年代、職種、勤務の形(在宅・交代勤務・外回りなど)、管理職かどうかで、必要な情報や読める時間は異なります。優先する対象を決め、その人たちが実際に目にする経路を選びます。

3.どの情報を使うのか(情報の確かさ)

社内で発信する健康情報は、厚生労働省などの公的機関や、産業医・保健師が確認した内容を土台にします。出典を明記して発信すると、社員が自分で確かめる習慣(批判的な段階)を身につけるきっかけにもなります。

健康に関心の薄い社員にも届ける工夫

厚生労働省の「健康日本21(第三次)推進のための説明資料」では、健康な食環境や身体活動・運動を促す環境など、自然に健康になれる環境づくりに取り組み、健康に関心の薄い者を含む幅広い対象に向けた健康づくりを進めるとしています。社内の情報提供でも、「読みに来てもらう」だけでなく、日々の仕事の流れの中で目に入る形を考えることが大切です。

届け方向いている場面気をつける点
社内ポータル・イントラネット制度や相談先など、いつでも確かめられる情報置いただけでは読まれにくい。ほかの経路から案内する
メール・社内チャット健診や研修など、時期が決まった案内回数が多すぎると読まれなくなる。1回に伝えることを1つに絞る
掲示物・デジタルサイネージパソコンを使わない職場、休憩室や通路内容を定期的に入れ替える
朝礼・部署の会議管理職から一言添えてもらいたいとき管理職に伝える内容を事前に渡しておく
研修・セミナー(集合・オンライン)理解を深めたい、質問を受けたいとき参加者を記録する。参加できない人向けに録画や資料を用意する

どの経路でも、次のような工夫が使えます。

  • 行動を1つに絞る:「健診結果のこの欄を見る」「相談先を1つ覚える」など、読んだ後にとる行動を具体的に示す
  • 時期を合わせる:健康診断の前後、ストレスチェックの時期、入社・異動の時期など、社員が自分の健康を考えやすい時期に届ける
  • 短く、図や表を使う:長い文章よりも、要点と相談先がすぐ分かる形にする
  • 選べる形にする:読む・見る・参加するなど、社員が関わり方を選べるようにする

年間を通じて続ける計画

情報提供は、一度きりの発信では定着しにくいため、年間の計画に組み込みます。社内の行事や、健康診断・ストレスチェックの時期に合わせて、テーマを割り振る方法があります。

時期の例テーマの例主な対象
入社・異動の時期社内の相談先、健康に関する制度の使い方新入社員、異動者
健康診断の前後受診の案内、健診結果の見方、再検査の受け方全社員
ストレスチェックの時期セルフケアの基本、結果の受け止め方と相談の方法全社員(管理職向けには集団分析の生かし方)
繁忙期の前睡眠や休養のとり方、長時間労働の予防全社員、管理職
通年運動・食事など、自社の健康課題に合わせたテーマ優先する対象

この表は一つの例です。自社の健康課題と、年間の業務の流れに合わせて調整してください。計画には、テーマごとの担当者と、使う経路、参加や閲覧の記録のとり方もあわせて書いておきます。

効果の確かめ方

情報提供の効果は、次の3つの段階で確かめる方法があります。

  1. 届いたか:研修への参加率、メールの開封や社内ポータルの閲覧の状況など(部署・拠点ごとの差も確認する)
  2. 分かったか:研修や発信の後に、簡単なアンケートや確認の設問で理解を確かめる
  3. 行動に変わったか:数か月後に、健診の再検査の受診、相談窓口の利用、社内の運動施策への参加など、行動に変化があったかを確かめる

参加率だけでは、内容が役立ったかは分かりません。反対に、行動の変化だけを見ると、変化がなかったときに、情報が届かなかったのか、内容が合わなかったのかを区別できません。確かめる項目と時期は、計画を立てる段階で決めておきます。

情報提供で気をつけること

  • 医療の判断は専門職に任せる:社内の発信は一般的な情報にとどめ、個別の症状や治療について判断を示さない。気になることがあるときの相談先を必ず添える
  • 個人の健康情報を扱わない:発信や研修の中で、特定の社員の健康状態が分かる内容を使わない。アンケートは個人が特定されない形で集計する
  • 参加を強制しない、評価に使わない:参加や回答の状況を人事上の評価に使うと、率直に関わりにくくなる
  • 情報を定期的に見直す:制度や公的な指針は改定されることがあるため、社内ポータルの情報に確認日を入れ、定期的に更新する

情報提供の後に、組織の状態の変化を確かめる

ボディパレットでは、毎月の健康動態モニタリングで部署・組織ごとの状態の推移を確認し、変化のあった組織に合わせて運動や生活習慣のプログラムを組み合わせる支援を行っています。

社員向けの健康情報の届け方を相談したい方へ
自社の健康課題に合わせた情報提供の計画や、効果の確かめ方について、ボディパレットの担当者がご相談をお受けします。

よくある質問(Q&A)

Q. ヘルスリテラシーの向上は、健康経営優良法人の必須の要件ですか?

A. 健康経営優良法人2027の認定要件では、「ヘルスリテラシーの向上(管理職または従業員に対する教育機会の設定)」は、複数の評価項目の中から選んで満たす項目の一つです。中小規模法人部門では、④~⑩のうち2項目以上を満たす形です。大規模法人部門では、「従業員の健康保持・増進に関する教育」について参加率(実施率)を測っていることが求められています。詳しくは、その年度の認定要件で確認してください。

Q. 健康に関心の薄い社員には、どう届ければよいですか?

A. 社内ポータルに置くだけでなく、健康診断の前後など社員が自分の健康を考えやすい時期に、メールや掲示、朝礼など日々の仕事の流れの中で目に入る経路を組み合わせる方法があります。1回に伝える行動を1つに絞ると、読んだ後の行動につなげやすくなります。

Q. 発信する健康情報は、何を参考にすればよいですか?

A. 厚生労働省などの公的機関の情報や、産業医・保健師が確認した内容を土台にし、出典を明記して発信することをおすすめします。個別の症状や治療については、社内の発信で判断を示さず、相談先を案内します。

参考資料

この記事の著者・監修

執筆:ボディパレット編集部(健康経営支援の企画・運用に携わるスタッフが執筆)
監修:髙瀬 雅弘(フラクタルワークアウト株式会社代表取締役 / ボディマネジメントパートナー)
最終更新日:2026年10月3日

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