ヨガは、運動が得意でない社員も始めやすい運動施策です。取り入れるときは、働く場所に合う形式を選び、初心者向けのプログラムと指導経験のある講師を選んで、強制しない運用にすることが大切です。
ヨガとは、古代インドに起源をもつ修練法で、体のポーズ、呼吸法、瞑想を組み合わせて行うものです。
この記事でわかること
- 公的機関の情報からわかる、ヨガの位置づけと安全面の考え方
- 施策としてヨガを選ぶときに押さえておきたい点
- 対面・オンライン・動画・外部施設の4つの形式と選び方
- 講師やプログラムの選び方と、参加しやすくする工夫
- 運用で決めておくことと注意点
※この記事のヨガや身体活動に関する内容は、厚生労働省の公表資料等にもとづき2026年9月28日に確認しました。本記事は職場での施策の進め方を説明するもので、ヨガの効果や、病気・痛みの治療について説明するものではありません。持病のある方、妊娠中の方、けがや痛みのある方は、参加の前に医師や産業医等にご相談ください。
公的機関の情報からわかるヨガの位置づけ
厚生労働省の「統合医療」情報発信サイト(eJIM)では、米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)の情報をもとに、ヨガに関する研究の状況が紹介されています。それによると、ヨガはストレスの自己評価や腰痛などについて有益である可能性が研究で示されている一方、テーマによって根拠の強さに差があり、効果がはっきりしていない分野もあるとされています。
安全面については、適切に行えば健康な人にとって安全な身体活動と一般に考えられているとされています。ただし、けがとしては捻挫や肉離れが多く、部位では膝や下肢が多いこと、また、指導を受けずに自己流で行うことはけがのリスクの増加と関連していることも紹介されています。
また、「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の高齢者向けの推奨シートでは、筋力、バランス能力、柔軟性などの複数の体力要素を高める「多要素な運動」の例の一つとして、ヨガが挙げられています。
施策を検討する立場からは、ヨガを「特定の不調を改善するための手段」として打ち出すのではなく、「体を動かす機会を増やし、気分を切り替える時間をつくる選択肢の一つ」として位置づけるのが、社員への説明としても無理がないといえます。
施策としてヨガを選ぶときに押さえておきたい点
ヨガには、特別な運動経験がなくても始めやすい、体への負荷を参加者に合わせて調整しやすい、自席や自宅など限られた場所でも行いやすい、といった特徴があります。運動習慣のない社員に、最初の一歩を用意したい場合に向いている選択肢です。ゆったりとした穏やかなものから、体への負荷が大きいものまで、さまざまなスタイルがある点も知っておきます。
一方で、ヨガだけで国の推奨する身体活動量を満たすことを前提にしないことも大切です。同じガイドでは、成人に向けて、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分以上行うこと、息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上行うこと、筋力トレーニングを週2〜3日行うことなどが推奨されています。同じガイドの身体活動の強さの表(メッツ表)では、ヨガは2.5メッツとされ、歩行と同じ程度以上とされる3メッツを下回ります。ヨガを入口にしつつ、歩く機会を増やす取り組みや筋力トレーニングなど、ほかの運動の施策と組み合わせて考えると、施策全体のバランスがとりやすくなります。
4つの形式と選び方
ヨガの施策は、主に次の4つの形式に分けられます。社員の働く場所と、どのくらいの人数に届けたいかによって向き不向きがあります。
| 形式 | 特徴 | 向いている職場 | 準備で気をつけること |
|---|---|---|---|
| 対面(社内に講師を招く) | 講師が参加者の様子を見ながら、動きの調整や声かけができる | 同じ事業所に集まる社員が多い職場 | 会議室などの広さ、床の状態、マットの用意、着替えの場所 |
| オンライン(決まった時刻にライブ配信) | 拠点や在宅勤務の社員も同じ時間に参加できる。講師に質問しやすい | 拠点が複数ある職場、在宅勤務の多い職場 | 配信ツールの案内、カメラのオン・オフの扱い、自宅での安全な場所の確保 |
| 動画(好きな時間に見て行う) | 勤務時間が不規則な社員も参加しやすい | シフト勤務や外出の多い職場 | 初心者向けの内容から用意する。参加の把握がしにくいため、記録の方法を決めておく |
| 外部の施設(スタジオ等の利用) | 本格的なレッスンを受けられる。社員が自分の予定で通える | 事業所の近くに施設がある職場 | 通える社員とそうでない社員の差、利用方法の周知 |
最初から1つに絞る必要はありません。例えば、対面のクラスをオンラインでも同時に配信し、あとから録画を見られるようにするなど、形式を組み合わせると、働く場所や時間による参加のしやすさの差を小さくできます。
講師とプログラムの選び方
ヨガはスタイルによって体への負荷が大きく異なるため、職場で行う場合は、講師とプログラムの選び方が参加しやすさと安全の両方に関わります。
- 初心者向けから始める:eJIMでは、初心者は頭立ちや肩立ち、勢いのある強い呼吸法などの極端な実践を避けるべきとされています。最初は、立ったまま、または座ったまま無理なくできる動きを中心にしたプログラムを選びます。
- ホットヨガは避ける:高温の環境で行うヨガは、職場の施策としては体調管理の面で注意が必要です。eJIMでは、妊娠中はホットヨガを避けるべきとされています。
- 指導の経験を確かめる:eJIMでは、資格のある指導者のもとで行うことが勧められています。講師や提供事業者を選ぶときは、指導の経験や、運動経験の少ない人への指導に慣れているかを確かめます。
- 動きの代わりを示してもらう:同じポーズでも、膝をつく、いすを使うなど、負荷を下げたやり方を講師から示してもらえると、体力や体の状態に差がある参加者も一緒に参加しやすくなります。
参加しやすくする工夫
ヨガに興味があっても、「体が硬いから」「着替えが面倒だから」といった理由で参加をためらう社員は少なくありません。次のような工夫で、参加のハードルを下げることができます。
- 服装を指定しすぎない:仕事着のままでもできる回を設けると、業務の合間にも参加しやすくなります。
- 1回の時間を短めにする:まずは15〜30分程度の短い回から始め、反応を見て調整します。
- 時間帯を複数用意する:始業前、昼休み、終業後など、参加しやすい時間は人によって異なります。
- オンラインではカメラのオン・オフを選べるようにする:自宅の様子を映したくない社員も参加しやすくなります。
- 案内の言葉に気をつける:「体が硬い人も歓迎」「見学だけでも可」など、初めての人や運動が苦手な人に向けた一言を添えます。
運用で決めておくこと
時間の扱い:業務時間内に行うのか、休憩時間や終業後に任意で参加するのかを先に決めます。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、参加が業務上義務づけられている研修等の時間は労働時間に当たるとされています。参加を事実上求めるような形にする場合は、就業規則とあわせて社会保険労務士等の専門家に確認しておくと安心です。
体調の確認:参加の案内には、持病のある人、妊娠中の人、けがや痛みのある人は、事前に医師や産業医等に相談することを明記します。eJIMでは、膝や腰のけが、重度の高血圧、バランスの問題、緑内障などがある場合には、ポーズの変更が必要になることがあるとされています。参加者の健康に関する情報を集める場合は、必要な範囲に限り、取り扱いのルールを決めてから行います。
記録と見直し:参加した人数や回数を、形式や時間帯ごとに記録しておくと、どの形が自社に合っているかを比べられます。あわせて、参加しやすさや参加しない理由を短いアンケートで聞いておくと、見直しの材料になります。記録は施策の見直しに使うものであり、個人の評価には使わないことを社員に伝えておきます。
実施するときの注意点
- 強制しない:参加は本人の意思によるものとし、参加しないことで不利な扱いを受けることがないようにします。
- 無理をしない:痛みや違和感があるときは中止すること、ほかの人と比べず自分のできる範囲で行うことを、毎回案内します。
- 医療の判断はしない:講師や社内の担当者が、個人の不調の原因を判断したり、治療を目的とした動きを勧めたりすることは避けます。体の不調の相談があった場合は、産業医等の産業保健スタッフや医療機関につなぎます。
- 場所の安全を確かめる:対面では床の滑りやすさや周りとの間隔を、オンラインや動画では、自宅で周りに物がない場所で行うよう案内します。
働く場所が分かれている会社でヨガを届けるには
拠点が複数ある会社や在宅勤務の多い会社では、対面のクラスだけでは参加できる社員が限られます。オンラインのライブ配信を中心に、録画や動画を組み合わせると、働く場所や時間帯に左右されにくい施策にできます。
ボディパレットでは、毎月の健康動態モニタリングで部署・組織ごとの状態の推移を確認し、変化のあった組織に合わせて運動や生活習慣のプログラムを組み合わせる支援を行っています。平日の朝や土曜日に、拠点や在宅からも参加できるオンラインの運動プログラムもあります。自社の働き方に合った形式や時間帯の選び方について、お気軽にご相談ください。
ヨガなど、社員が参加しやすい運動施策を検討している方へ
形式や時間帯の選び方、続けるための運用について、ボディパレットの担当者がご相談をお受けします。
よくある質問(Q&A)
Q. 体が硬い社員や、運動経験のない社員でも参加できますか?
A. 初心者向けのプログラムであれば、体の硬さや運動経験に合わせて動きを調整しながら参加できることが一般的です。講師に、いすを使うなど負荷を下げたやり方を示してもらうと、より参加しやすくなります。持病やけががある場合は、事前に医師や産業医等に相談するよう案内してください。
Q. オフィスで行うストレッチの施策と、ヨガの施策はどう違いますか?
A. ストレッチは業務の合間に数分で行う形が中心で、座りすぎへの対策として日常に組み込みやすいのが特徴です。ヨガは、ポーズと呼吸法を組み合わせ、ある程度まとまった時間を確保して行うことが多く、講師の指導のもとで行う形が勧められています。目的や確保できる時間に合わせて選ぶか、両方を組み合わせることもできます。
Q. 妊娠中の社員が参加したいと言った場合は、どうすればよいですか?
A. eJIMでは、妊娠中にヨガを行う場合は、医療機関で運動をしてはいけない医学的な理由がないことを確認すること、ホットヨガを避けることなどが示されています。参加の前にかかりつけの医師に相談してもらい、講師にも事前に伝えて、動きを調整できるようにしておきます。
参考資料
- 厚生労働省「統合医療」情報発信サイト(eJIM)「ヨガ」(海外の情報・一般向け、2025年3月10日更新)https://www.ejim.mhlw.go.jp/public/overseas/c02/13.html (2026年9月28日確認)
- 厚生労働省「統合医療」情報発信サイト(eJIM)「ヨガについて知っておくべき5つのこと」https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/communication/c03/20.html (2026年9月28日確認)
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(2024年1月)https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf (2026年9月28日確認)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』推奨シート:成人版」https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-002.html (2026年9月28日確認)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』推奨シート:高齢者版」https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-004.html (2026年9月28日確認)
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月20日策定)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html (2026年9月28日確認)
この記事の著者・監修
執筆:ボディパレット編集部(健康経営支援の企画・運用に携わるスタッフが執筆)
監修:髙瀬 雅弘(フラクタルワークアウト株式会社代表取締役 / ボディマネジメントパートナー)
最終更新日:2026年10月3日

