【専門記事】使っていない筋肉は“眠っている”かもしれません。 #01

早稲田大学スポーツ科学学術院教授/整形外科医・スポーツドクター 金岡 恒治
デスクワークやスマートフォン操作など、同じ姿勢が続くことが多い現代。姿勢が崩れたり筋肉を使わなくなったりすることで、「インナーマッスル」と呼ばれる関節の深部にある筋肉が働かなくなり、脳がその正しい使い方を忘れてしまうことがあります。これを「インナーマッスルの冬眠状態」と表現し、肩こりや首こりなどの不調につながるリスクがあると警鐘を鳴らしています。
この記事では、インナーマッスル研究の第一人者である金岡教授の知見をもとに、肩こり・首こりの原因と、体を内側から整えるケア方法をご紹介します。
■ インナーマッスルが働かないと、肩こりが起こる?

インナーマッスルとは、骨や関節のすぐ近くにあり、それらを安定させるために常に働いている筋肉です。
首の前側にある「頸長筋」、肩甲骨の内側にある「菱形筋」などが代表例で、姿勢の保持や関節の位置のコントロールに欠かせません。
インナーが働いていないと、アウター(表層筋)が代わりに過剰に頑張ることに。その結果、首の後ろや肩の筋肉に過度な緊張が生まれ、肩こりや頭痛、姿勢の崩れへとつながってしまうのです。
■ インナーマッスルは“鍛える”より“目覚めさせる”が正解
インナーマッスルは、筋トレのように重い負荷で鍛える筋肉ではありません。大事なのは、「正しい順番で使えるようになること」。これを“コンディショニング”と呼び、筋肉に「動きを思い出させる」感覚が重要となります。
■ 1日3回でOK! 頸長筋を目覚めさせるエクササイズ

対象筋 首の前側にある「頸長筋」
この筋肉が働かないと、頭の位置が前にシフトして亀首状態となり、首や肩に大きな負担がかかります。ちなみに、この姿勢でレントゲンを撮るとストレートネックになっています。
改善エクササイズ
- 枕を外し、仰向けになります(首の後ろに小さな隙間ができる状態)
- その隙間を埋めるようにアゴを引き、ゆっくり鼻で線を描くように頭頂部から頭を上げる
- 肩甲骨が少し浮くくらいまで上げたら10秒キープ
- アゴを引いたままゆっくり元の位置に戻し、アゴを緩める
→ 朝起きた時などに3回繰り返すだけでOK
ゆっくり戻す動作もインナーマッスル活性に大切なポイント!
■ 姿勢改善にも効果大! 菱形筋を活性化するエクササイズ

対象筋 肩甲骨の間にある「菱形筋」
この筋肉が働いていないと、肩が前に出て、背中が丸まりやすくなり、猫背姿勢に。肩こりや五十肩の原因にもなります。
改善エクササイズ
- 背筋を伸ばして立ち、頭の上から吊るされたような意識で姿勢を正す
- 手を胸の前で合掌し、そのまま両腕を頭上へ持ち上げる
- 小指側から手を開き、手のひらを外に向けながら、腕をゆっくり下げる
- このとき、肘が頭の後ろを通るように意識しながら下げるのがポイント
→ 肩甲骨が内側に寄っていく感覚を感じながら、3回繰り返す
■ 目指すのは「動ける身体」「疲れにくい身体」
これらのエクササイズは、「筋トレ」ではなく「筋肉の使い方の再教育」です。
アスリートが行う“コンディショニング”を一般の人にも必要な習慣にすべきだと考えます。日々の生活の質(ライフパフォーマンス)を高めるには、筋肉を目覚めさせ、使える身体を取り戻すことが何より大切なのです。
■ 習慣化のヒント
- 朝のベッドの中での「頸長筋エクササイズ」
- 洗面台の前で「菱形筋エクササイズ」
- 肩や首が重いと感じた時の“リセット”として実施
□記事監修□

早稲田大学スポーツ科学学術院教授/整形外科医・スポーツドクター
金岡 恒治 KOUJI KANEOKA筑波大学整形外科講師を務めた後に、2007年から早稲田大学でスポーツ医学、運動療法の教育・研究にたずさわる。
シドニー、アテネ、北京五輪の水泳チームドクターを務め、ロンドン五輪にはJOC本部ドクターとして帯同した。
アスリートの障害予防研究に従事しており、体幹深部筋研究の第一人者。
近年ではスポーツ・運動によって人類のライフパフォーマンスを高め、健康寿命を伸ばすことを課題に活動している。
【その“なんとなく不調”、筋肉の使い方に原因があるかも?】
姿勢が崩れる、疲れやすい、腰が痛い――
それは「筋肉がうまく使えていない」ことが原因かもしれません。
普段あまり意識することのない“眠った筋肉”に光を当て、正しく身体を動かすためのヒントをお届けします。
腰痛や姿勢の悩みを繰り返さないために、ぜひご覧ください。
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